号外、WBC、ワールド・クラシック。ベースボール決勝戦観戦記#1号外、WBC、ワールド・クラシック。ベースボール決勝戦観戦記#1

[ rob**t_d*_ne*o ]という、ロス在住の方からコメントが届いた。
すみません、木庵先生。
上記話題と全く関係の無い話ですが、今夜、ドジャーズ球場へ日本韓国戦を
観戦しに行かれたとの事。是非、その時の感想・興奮を伝えて下さい。
  そこで、木庵流観戦記を書いてみる。
  ワールド・クラシック・ベースボールが行われていることは知っていた。北京オリンピックでの敗退で、それほど関心はなかった。ロスでも準決勝、決勝観戦ツアーか企画され、もし日本チームが勝ち残らなければ、それ以降の試合のチケットは払い戻しされるという。日本チームがアメリカに上陸してサンジェゴで試合をしていたのは知っていたが、球場に足を運ぶ気持ちにはなれなかった。きっと前回と同じアナハイム球場で行われると思っていたからである。アナハイムは我がアパートからちょっと遠い。
  日曜日、俳句会のあと、トイレを借りようとホテルに行った。ホテルの前の道路にバスが2台停まっていた。フロントを見ると「WBC」と表示してある。ツアーガイドらしき人に、「これからアナハイムに観戦ですか、何時からですか」と尋ねてみた。「いえ、今日はドジャーズ・スタジアムです。5時半からです」。「今からでもこのツアーに参加できますか」「ちょっと待ってください。係りの人に聞いてきますから」、「いや駄目だそうです」。この我々のやり取りを聞いていた人が、「明日のチケットならありますよ」と、会話の中に入ってきた。「今日なら特別に30ドルでお分けできます」「ところで、貴方はどこから来たのですか」「ニューヨークです」。多くのチケットを手にしている人は、旅行関係の人であろう。恐らく、ニューヨークから幾人かの人を連れてきたのであるが、余分にチケットをもっているので、ロスでそれを売りさばこうとしていたのだろう。
   私は観戦への心が少し動いたが、準決勝(当日)でアメリカに負ければ、決勝に日本が進出できず、日本が出場しない試合は面白くないので、結局買わなかった。それに、私の車で直接球場に行けば当日のチケットは購入できたのだが、この段階では余り観戦に興味がわかなかった。「結果だけでも分かればよいか」程度にしか考えていなかった。インターネットで試合の経過を見ていると一回に松坂が打たれて1点取られたというから、「負け試合になるであろう試合に行かなくてよかった」と思っていた。ところが、次の日(月曜日)の日本語テレビ番組を見ると、9対4で勝っているではないか。その段階でも、観戦までは考えていなかった。この日は予定が入っていたからである。ところが午前10時に、予定がキャンセルされたことが分かった。それなら、「野球でも見るか」と、球場まで出かけた。球場は私のアパートから車で20分でいける。昨日の話では、30ドルで買えるというから、球場で直接買うのだから20ドルぐらいだと思っていたが、さにあらず、55ドルだという。それも一番安いトップデッキの場所。2年前、ドジャーズのゲームで7ドルのところだ。ところでドジャース球場のトップデッキというのはホームベース側に4層ぐらいの座席の区分がある最上階のところである。外野席と同じ値段である。私は子供のときからよく甲子園球場に行っていたが、甲子園の内野席の最上階よりちょっと高いぐらいのところに位置する。だからドジャーズ球場に行くときは、この一番安くて甲子園の内野席に相当する(?)トップデッキでいつも満足している。ドジャーズ球場の内野席より、上から見えるのでゲームの流れがよく分かる。選手の表情はスクリーンに写しだされるので、別に問題はない。
  駐車料金も15ドルと高い。そこで球場の近くで車を停めて、歩いて球場に入った。日韓での決勝であるので、ほとんど、韓国人や日本人が多い。両国人の区別はつきにくい。もっている旗で識別するか、喋っている言葉で判断することになるが、韓国語や日本語が行きかっているわけではない。韓国人と思しき顔の青年は英語を喋っている。日本人らしき人間も英語を喋っている。日本から野球観戦のためにやって来たと思えるような人が大分いる。6時半からスタートであるが、木庵は5時半ぐらいに球場の中に入った。駐車場の埋まり具合からいくと、メジャーリーグの試合より、少し観客は少ないぐらいであった。後で分かるのだが、この日は月曜日で多くの人が仕事を終えてからやってきているので、3回、4回あたりでも車の長蛇の列がトップデッキから見えた。結果として入場数は5万4千であった。殆ど満席になっていたことになる。これはワールド・クラシック・ベースボールが始まって以来の新記録であるという。
  私は三塁側、つまり日本チーム側に席を買ったが、友達が一塁側に席をとっていることが、球場に行く前のメールのやり取りで分かった。そこで彼を捜した。トップデッキの一番外野よりの前から2番目のシートに、友達らしき人が座っている。韓国側の席だし、顔が韓国人のようにも見えるので、ひょっとしてま違っているかなと思いながら声をかけた。「Iさんですか」。間違いなく彼であった。見慣れない野球帽を被った上に、普段とは違う服を着ているので、韓国人ではないかと思ったのである。「イヤー、韓国人かと思いましたよ」「そうなんですよ。よく間違えられるのです」。そういう木庵だって、ロスではよく韓国人に見間違えられ、韓国語で話されることが多い。ましてやアメリカ人からすると韓国人も日本人も顔では識別が出来ない。私のような日本人でも難しい。特に若者の識別は難しい。中年以上の人間であると、それぞれの文化から染み込んだ何ものかによって韓国人であるか日本人であるかは大体分かるが。
   友達が座っている一角は日本人が陣をとっている。私は友達の横に座った。もしこの席の人がやってくれば、移動すればよい。トップデッキあたりでは、どこの席に座ろうが、それほど問題になることはない。それより、流石に大雑把なアメリカである。ズル、ごまかしをしようと思えばできる。それは、一番安いトップデッキのチケットを買い、ネット裏の席で観るのである。トップデッキ(4階)からネット裏(一階)までエレベーターで行き来が自由である。各階にあるファーストフード店に行くという口実で、そのような口実を係りの人に説明する必要もない。席が空いていればそこに座れば、係りの人がチックすることはほとんどない。ただ席のチケットを持ってきた人がくれば、すぐに席を立てばよいだけである。このあたりに、アメリカのアバウト文化、おおらかさがある。
    ロスでは国際空港、ダウンタウン、ハリウッドなどを結ぶ列車がある。先日初めてこの列車を利用したが、驚いたことに、列車は運転者一人で、車掌は一人もいない。また駅員も殆どいない。自動販売機で切符を買い、勝手に乗車すればよい。ということは切符をもたなくても自由に乗車は可能ということである。ところが、駅には次のような表示がある。「この線から内側には切符の所持が必要である。もし違反すれば270ドルの罰金を科す」。違反する人は少ないようである。違反をすれば、厳しい罰を科するからである。野球場での違反行為をする人は殆どいない。考えさえしないのだろう。交通違反に対する罰は厳しい。アメリカの警察官はちょっとした違反でもすぐにチケットをきる。弁解の余地がない。学校教育も厳しい。アメリカの学校は自由だと日本の人は思っているだろうが、さにあらず。厳しい。日本の学校以上に教師が生徒をコントロールしている。自由な雰囲気で授業はするが、教師の指示に従わなければ、すぐに罰が待っている。例えば高校生のレベルになると、土曜日に登校する罰があり、毎週相当数の生徒が出席している。出席を拒絶すれば罰則が倍増し、ひどいときには放校処分となる。だから、ほとんどの生徒は罰則に従う。
   アメリカのアバウト文化も、規制が厳しく、日本以上で---ある。この厳しい規制がアメリカ社会を上手く機能させているのであろう。
  野球観戦記を書く予定であったがいつの間にか、文化論になってしまった

つづく