櫻井よしこ、異形の大国中国#9

櫻井よしこ、異形の大国中国#9
  「マオ」上巻19章が特に圧巻である。日中を全面戦争に誘い込み、追い込むための中国共産党のスパイ、張治中の動きが時系列で具体的に描かれている。同書には、張の回想録から引用した張と周恩来の企みの会話が次のように書かれている。国民党の南京上海防衛隊の司令官だった1925年当時、張は「中国共産党に心から共鳴し(中略)入党したいと考え、周恩来氏に申し出た」が、周恩来は張に、国民党にとどまり、ひそかに中国共産党と共闘するよう要請した。こうして中国共産党のスパイとなった張治中は、敵将、蒋介石の懐刀としての地位を占め続けたのだ。
  チャンはその背後にスターリンが存在し、スターリンは日本と中国との全面戦争に引きずりこみ、日本がソ連の敵となる状況を回避しようとしたという。
中国共産党の、さらにその後ろにいるソ連コミンテルンの指示によって、張治中は蒋介石の戦線不拡大方針にもかかわらず、南京上海防衛司令官の立場を利用して戦火を広げて行った。こうして北京近郊の盧溝橋での衝突からわずか数週間で1000キロも離れた上海に飛び火し、日中両国は全面戦争に入っていった。張こそが盧溝橋事件を利用して上海事変をおこし、日中対立を激化させ、全面戦争に追いやった。チャンは彼を「史上最も重要な働きをしたスパイ」「事実上たった一人で歴史の方向を変えた可能性が大きい」と形容する。
   一方、毛は日本軍進撃を大歓迎した。「抗日戦争は日本の力を利用して蒋介石を滅ぼすチャンスだった」からである。この点についてチアンは、訪中し過去を謝罪した日本の政治家らへの毛のこんな言葉を引用している。
「いや、日本軍閥にむしろ感謝したいくらいですよ」「(日本軍が中国を広く占領してくれなかったら、国民党に勝てないために)我々は現在もまだ山の中にいたでしょう」
   チャンの著書に強い説得力を与えているのは、丁寧な取材に加えて、彼女が使用した厖大なロシア側の資料である。旧ソ連時代の機密情報が、ソ連崩壊以降大量に放出されたのは周知のとおりだ。また、西側諸国は情報公開によって、機密書類でさえも30年、50年という時間をおいて公開し始めた。

中国の陰謀、カナダの反日教育

  カナダ・トロント在住のある日本人が桜井に手紙を送っている。その内容は、カナダで反日教育が進行中で、背後に中国共産党の情報宣伝活動があるという。
  「第二次大戦アジア史保存連盟」(通称ALPHA)という団体が企画して、カナダのオンタリオ州の歴史、社会科の教員24名を04年夏、上海、南京等各都市に送り込み、研修を行った。費用はALPHAが負担、現地での研修及び旅行日程の概要もALPHAが決定した。研修に参加した教員たちは、カナダに戻った時点で、オンタリオ州教育省の教育課程担当部に手紙を書き、第二次大戦に関する歴史のなかで、アジアにおける出来事、つまり「中国における日本軍の暴虐」を全く教えてこなかった従来の歴史教育を是正するよう要求した。ALPHAは05年7月にも、第二次研修視察団、20名を中国に送り込んだ。そしてオンタリオ州教育者に変化が生じた。05年版の10年生(高校1年生)の教育課程は第二次大戦における重要な出来事として、ナチスユダヤ人大虐殺と並んで、日本軍による「南京大虐殺」がはじめて加えられたというのだ。
   オンタリオ州にはカナダの総人口の3200万人の3分の1が在住しており、同州で反日教育が確立されれば、反日の価値観は全カナダに広がっていくと、カナダ在住の方は危惧している。
   「文藝春秋」06年6月号によると、ALPHAの名前がはっきりと浮上したのは98年である。アイリス・チャンの「ザ・レイプ・オブ・南京」の宣伝及び販売に協力した中国系団体で「世界抗日戦争史実維護連合会」の参加団体である。上の連合会は「中国国営の新華社通信とつながるウェブサイトを持ち、中国政府からの直接の支持を得て、中国の主要都市で種々の集会を開いている」と報じられている。つまり、同連合会は、虚構を素材として日本非難を徹底するのが目的の中国政府直轄の団体で、傘下のALPHAも同様ということになる。

アメリカでも、このような反日支那の団体が多い。それも興味があるといえば語弊があるが、このような団体が時として、反日日系人と結びつくことである。マイク・ホンダという反日日系下院議員のことは日本でも知られているであろう。彼は反日支那団体「世界抗日戦争史実維護連合会、「人民政治協商会議広東省委員会 」、「アジア太平洋第二次大戦残虐行為記念会」、「中国ホロコースト米国博物館」などと関係している。2007年8月に表ざたになった、中華系で11993年に詐欺罪で指名手配にあっていながら米民主党特にヒラリー・クリントンの資金源として暗躍していたノーマン・スー(Norman Hsu、徐詠芫)の逮捕の後、この人物から献金を受けていたホンダは、公開の謝罪と資金返還を余儀なくされた。なお、ノーマン・スー事件は、ヒラリーの大統領指名選敗北の主因となったとされる。[3] ホンダというような日系人でありながら反日のような人間が現れた原因のひとつに、戦前に日本からやって来た人間が、戦後日本からやって来た人間から差別されたり見下げられた経過があるように思う。また日系人が生きるところはアメリカであって、アメリカの主流に媚び諂うことが生きる術だと思っている少数の日系人がいることも事実である。マイクの選挙区は中国人、韓国人が多く、彼等からから支持を得ることが選挙に勝つことになり、日本を裏切ることはそれほど罪の意識がない。また戦後日本からやってきた左翼が、アメリカという言論の自由なところで、日本なら論敵によって少しは変化するのであろうが、過去の考え方をそのまま堅持することができ、支那反日組織と結びついている。彼等は思想的に化石のようなものであるが、支那組織に利用されているからたちが悪い。木庵>つづく