櫻井よしこ、異形の大国中国#4

櫻井よしこ、異形の大国中国#4
中曽根氏が残した汚点
  日中両国は1972年に国交を樹立、78年には平和友好条約を結んだ。現在まで3兆3000億円に迫る政府開発援助(ODA)が本格化したのが当時だった。このとき、中国は尖閣諸島問題について「子々孫々」の世代に「平和的話し合いで解決」しようといって、尖閣問題を棚上げにした。当時の中国はいかにして援助を引き出すかの一点のみだったのだ。尖閣靖国も、援助を前に二の次にされたのが実態で、靖国参拝で中国国民の心が傷つくというのは政治的方便にすぎない。
  「A級戦犯」の合祀が明らかにされたあとも、大平首相は都合3回、春秋の例大祭に参拝した。後継者となった鈴木善幸首相は3度の8月15日の参拝を入れて計8回参拝した。中国が介入したのは、このあと、1985年8月の中曽根康弘首相の参拝のときだ。中曽根はそれ以降、中国の非難を受けて参拝をとり止めた。中国の政治的圧力に正当な理由もなく屈服した氏の行為は許されるものではない。中曽根はその失敗を糊塗するかのように、その後現在まで迷走を重ね、今では「A級戦犯分祀論」を主張する。そして中曽根以降、歴代の内閣総理大臣はほぼ全員が靖国問題から目を背ける一方で、中国への援助には卑屈なほどに熱心だった。

  日本も没収したい、中国の教科書
   中国大連市で、日本人学校で使用する小中学校用の教材10種128点が税関当局に指し押さえられ、日本人学校側が始末書と罰金1000元(約1万3000円)を支払っていたことが、05年6月27日までに判明した。情報を総合すると、地図を含む教材の一部は罰金を支払った後も日本側に返却されておらず、28日「産経新聞」朝刊は、これを「没収」と報じ、NHKは28日正午のニュースで「内容の更なる検討のため」と報じた。
  中国側が検閲で咎めたのは主に、中国大陸と台湾が異なる色で塗り分けられていたこと、尖閣諸島を日本領としていたことだそうだ。中国には大連、北京、上海、広州、天津、蘇州、青島、香港(中学部)の8地域の日本人学校があり、現地の法律遵守を条件に設立が認められているため、中国当局による検閲は拒否できない事情があることも報じられた。
   中国の教科書は国定教科書で一種類しかない。歴史教科書について日本政策研究センターが「ここがおかしい中国・韓国歴史教科書」に読み易く整理している。それを見ると、元々独立国だったチベットが、中華人民共和国が樹立された直後の1950年10月に軍事侵略され、凄まじい弾圧の末に中国に併合されて今日に至っていることを、中国の国定教科書では「平和解放」と教えている。
   全てが正反対に捏造されているのだ。朝鮮戦争北朝鮮が突然軍事侵攻したことにより勃発した。それが真実である。米国は当時北朝鮮が突然軍事侵攻するとは考えず、韓国には軍事顧問団500人程を残しているだけだ。韓国軍もまた、北朝鮮の侵攻を予想しておらず、備えもなかった。韓国側は軍事的に極めて手薄の状態だったのだ。そのため、北朝鮮軍は破竹の勢いで38度線を破り、韓国の南部深くまで迫った。肝心の中国軍は、北朝鮮を助けて韓国を侵略したのである。その時に派遣されたのは、延べ人数290万人にのぼる中国人民解放軍であり、その主力は第四野戦軍だった。第四野戦軍林彪元帥が司令官を務めていた中国最強の軍隊である。中国の第四野戦軍はたちまちの内に、韓国領土の90%を占領した。そのことには一言も触れず、「米帝国主義」非難のために史実を捏造しているのだ。
 
   日本に関する記述にも捏造が溢れている。昭和3年(1028)の済南事件を中国の教科書はこう書いている。「日本帝国主義は(蒋介石の)国民政府の北伐を阻止するため、公然と出兵して『済南虐殺事件』をひき起こした」。これも事実は逆だ。日本軍は蒋介石の北伐軍から邦人を保護するために出兵したが、虐殺されたのは日本人の方だった。特に、中国軍は日本人女性に蛮行、侮辱を加えた。その上、衣服をはぎとられ中国軍に虐殺された日本人女性の遺体を日本側が検死している写真が、中国の教科書には、七三一部隊が中国人女性を生きたまま細菌で生体実験し、殺した写真として掲載され、子供たちに教えられているのだ。

アジアの“嫌われ者”は中国だった   06年9月15日から3日間にわたって「アジア民主化のための世界フォーラム」(WFDA)が台北で開催された。「アジア民主化のための世界フォーラム」は非政府組織(NGO)であり、同会議には、東南アジア諸国連合ASEAN)の代表をはじめ、インド、中国、韓国、米国、カナダ、ドイツ、フランスなど、計39か国の代表が集まった。各国の代表は、政府系研究機関からNGOまでさまざまだった。彼らは一様に指摘したのは、「アジアの民主化を潰し」幾千万の人々を「不幸に陥れている」元凶は中国政府だという点だった。彼らの中国政府に対する批判は驚くほど強く、反対に日本に対しては、インドやASEAN諸国と共に、より積極的にアジアに関与すべきだという主張が大半だった。嫌われているどころか、日本は大いに期待されているのだ。
   ウイグル族のアーキン・アルプテキン氏は語った。
「・・・9月11日の米国への同時中枢テロ事件が発生すると、中国当局ウイグル族のなかに多くのテロリストが存在すると決めつけ、弾圧を開始したのです。・・中国は米国が「悪の枢軸」と名指しで非難した北朝鮮の暴走をおさえる役割を自ら買って出た。また、米国と共にテロと戦うと宣言し、それを口実として、国内の民族運動の取り締まりと弾圧に乗り出した。米国は自分自身のテロとの戦いを優先する余り、中国の行動を黙認した。結果として、中国政府は、わずか10日程前には新疆ウイグル自治区の状況は『全て平和だ』と説明していたのを反転させて、テロの動きがあると言い始めた」
   アーキン氏は人権を守るための国際組織「アムネスティ・インターナショナル」の報告を紹介した。
「2001年9月11日から2005年までに、ウイグル族3000人が逮捕され、200人が政治犯として獄につながれ、50人が処刑されたと報告しました。ウイグル族は1000年以上もの間、東西の文明を融合させてきた民族です。シャーマニズム、仏教、キリスト教イスラム教を共存させ、異なる宗教も異なる民族も全て受けいれてきました。その文明の融和のなかで、中国が侵入するまでは、我々は完全な独立国でした。それが何故、今、テロリストとして弾圧されなければならないのか。東トルキスタンウイグル)を踏みにじり続ける中国政府の責任を厳しく追及します。」
    ネパールのカトマンズで「チベット機構」を主催するツェテン・ノルブ氏も烈しく中国を非難した。
「我々は第二次世界大戦修了時まで明確に独立を維持していました。しかし、中国は1949年の建国直後に我が国に軍事攻撃を加え、59年には大弾圧を開始。以来、我々は主権を奪われ、従属を強いられてきたのです。国際社会から注目されてはいても、ダライ・ラマ法王によるチベットの自主独立回復の動きは進まず、今や、法王でさえ、独立を求めないかわりにチベット人の民族性が尊重されるなら現状を受け入れると、主張を後退させました。チベット民族が消滅するまで中国は弾圧を続けるのか。この瞬間にも、中国政府のチベット人への弾圧が続いています。そして世界は、何ら行動を起こさない。アジアの民主主義は中国によって潰されているのです」


<新疆ウイグルについては、http://blogs.yahoo.co.jp/takaonaitousa/22798235.html
チベット問題については、http://blogs.yahoo.co.jp/takaonaitousa/26537610.html
を参照してもらいたい。木庵>

   
  ところで、勝谷誠彦の××な日々。 に、興味のある記事があったので、ここに記載する。
 

 2009年2月4日号。<ブッシュへの靴投げはただの自己満足だが温家宝へのそれはチベット弾圧に関して国際社会への注意喚起だ>。

 惜しかった(苦笑)。
 温家宝首相に靴投げる/英大学で講演中、命中せず。
 http://www.asahi.com/international/update/0203/TKY200902030065.htmlつづく