櫻井よしこ、異形の大国中国#5

櫻井よしこ、異形の大国中国#5
「英国を訪問している中国の温家宝首相が2日、ケンブリッジ大学で講演中に、会場にいた男から靴を投げつけられる騒ぎがあった。靴は首相から約1メートル離れた壇上に落ち、当たらなかった。投げた男(27)はその場で警備員に取り押さえられ、公共秩序妨害の罪で起訴された。
  靴を投げるという行為はともかく、投げた男が言っていることはきわめてまっとうである。
  会場の後方にいた男が突然、笛を吹いて立ち上がり、『ここに独裁者がいるぞ。よく彼の言うウソを聞いていられるな。どうして大学は独裁者に身を売ることができたのか?』などと叫んで、黒いスニーカーを投げつけた。
 支那の体制が民主主義国家から見れば『独裁体制』であることは論議の余地がない。何しろ自分たちで共産党独裁と言っているんだから。

 日本の大マスコミのダメなところはこういう事が起きると『イロモノ』ネタとしてワイドショウなどで映像をさんざん垂れ流すくせに、その背景にあるものをちゃんと報じないことだ。靴を投げつけた人物は、おそらくチベット解放運動に携わるか、そのシンパであるものと思われる。そのことを朝日新聞は同じ記事の中で、こんなに腰が引けた表現で書いている。
 『在英中国大使館前では、中国政府によるチベット人や反政府活動家への弾圧に抗議するデモが起き、5人が警察当局に拘束された。この日の大学の会場にも、チベット支援団体ら数十人が集まっていた。』
 一方で温家宝の対応については「冷静さ」を強調だ。
 講演は一時、中断したが、温首相は取り乱すことなく、『我々は平和にやっている。男の行為が中英の友好を妨げることはない。調和は武力によって妨害されないと歴史が証明している』と再び語り始めた。会場の中国人留学生から歓声が上がったという。
 何のことはない、世界中どこの会場でもそうであるように、支那は工作機関を使ってオノレの国の留学生で会場を埋めているのである。胡錦濤が来た時に早稲田大学がまさにそうだった。違うのはあの売国にして亡国大学には靴を投げる根性のある学生が一人もいなかったことである。

 靴を投げた男は何も温家宝を傷つけることが目的だったわけではない。チベットで起きていることに、世界の注目を集めたかったのだ。しかしたとえば極東のこの阿呆な大マスコミが群がっている国では、ただのイロモノ記事で終わってしまう。
 ここはひとつ、彼の志を汲んで、温家宝チベット問題をめぐって欧州歴訪でどう迎えられたかを見ておこうではないか。

 欧州各国は確かに悩んでいる。今の経済危機から脱出するためには13億人の市場はゆるがせにはできない。しかし、その市場が自分たちのアイデンティティである自由と人権という人類普遍の権利を踏みつけにしている独裁国家のものであることも、また間違いないのである。
 今回、温家宝はフランスを訪問先から外した。これは明らかに、ダライ・ラマ14世猊下と会ったサルコジ大統領へのイヤガラセである。しかし外交儀礼としてこういうことはまさに「背中で示す」ことで充分であって、あからさまに口にすることはありえない。そのありえないことを、この下品な独裁国家はやってのけるのである」
      インドの防衛・戦略研究所のスルカンス・コンダパリ博士は、巨大化する中国の力を、政治・経済・軍事の面から分析するなかで、軍事力の増強と長期的軍事戦略に注意を喚起した。
「現在1.3兆ドルで世界6位の中国のGDPは、5年から7年後に倍以上の3兆乃至4兆ドルに達し、世界第3位の経済大国になるとIMFは推測している。中国の軍事力は、この経済成長を上回るペースで築かれてきた、軍事費の突出ぶりにおいて中国は国際社会で非常に特異な立場を占めていることを忘れてはならないのです」
   コンダパリ博士は中国の国家目標そのものがアジアの民主主義を脅かす性格を帯びていると指摘した。中国の軍事上の国家目標は海洋大国になることである。具体的には第一列島線第二列島線で示される海域の支配を確立することだ。中国海軍力の増強の現状は、中国が本気で第二列島線までの支配を目指していることを示しているというのだ。

21世紀の植民地主義
   第一列島線は日本列島、琉球列島か台湾を包含し、台湾とフィリピンのバシー海峡を通過してフィリピン群島を結ぶ線だ、中国はまず、この海域での中国支配を確立することを目指しており、そこには台湾支配も明記されている。次に目指すのが、第二列島線までの海域支配であり、それは日本列島をとびこえて広く太平洋にまで中国の支配を広げるというものだ。
  「台湾は勿論、東南アジア、日本をも支配下におさめようとするこの目標は、インドにも重大な影響を及ぼします。中国の影響力拡大は平和的手段よりも軍事力に基づいており、自由と民主主義を抑圧するネオ・コロナリズムであることを我々は注目すべきです」
   21世紀の植民地主義、それが中国のアジア政策であると、コンダパリ博士は警告したのだ。

   弾圧されてきた側、チベットウイグルベトナムの人々は無論、北朝鮮の国民も中国によって幸福になったとはいえないと指摘したのは韓国の「民主主義的統一センター」代表のヤング。ハワードだ。周辺諸国を不幸にしてきたのなら、中国は自国民を幸せにしてきたのだろうか。勿論「ノー」である。

   中国の事情について、サイバーポリス、毛沢東時代の大量の餓死者、文化大革命時代の犠牲者について櫻井は説明しているが、私のブログの中国論で述べているので割愛する。それに「東シナ海は対中従属外交の産物だ」「東シナ海の石油資源は自衛隊で守れ!」という見出しで、東シナ海での石油問題を論じているが、特に私にとって新しいことが書いてないので、これも割愛する。
   ここで岡本行夫という元外交官に対する櫻井の批判に興味があるので紹介する。これは05年10月17日、小泉首相靖国神社の秋の例大祭に参拝したことの中国政府、日本のマスメディアの反応の中での記述である。
  王毅駐日中国大使は、17日は中国の友人宇宙船神舟6号が無事帰還を果たした日であるとして、同日の参拝は「中国の国民に対する重大な挑戦」で「小泉総理大臣は中日関係を損ねたという歴史的責任を負わなければならない」との声明を発表した。反発したのは中韓両国だけではなかった。日本国内でも一斉に非難の声があがった。18日各紙の社説は「中国の反発が国益なのか」(毎日)、「これが『適切に判断』した結果なのか」(日経)、「負の遺産が残った」(朝日)などの見出しが並び、各社は署名入りのコラムでも首相参拝を非難した。日経では田勢康弘が首相の参拝は憲法20条3項に抵触の疑いありと指摘、朝日は本田優が首相参拝は「東アジアを不信と緊張の『負の螺旋』に陥れかねない」
それを止めるのは「日本の責任」と結論づけた。17日夜のテレビ報道では、元外務官僚の岡本行夫らが筑紫哲也の番組で沈痛な表情で日中関係の悪化を嘆いた、岡本はこれで「悪い材料は出尽くした」と述べた。また岡本は首相の参拝が「現在も軍国主義DNAを持つ日本」の象徴として中韓両国に受け止められていると憂慮する(「産経」18日)と発言している。
 ウィキペディア岡本行夫を見てみた。興味のあるところだけ抜粋する。岡本 行夫(1945年11月23日 - )は日本の外交評論家、実業家。元外交官。
[神奈川県生まれ。一橋大学経済学部卒業後、外務省入省。外務省では主として北米畑の有力ポストを歴任し、将来を嘱望される存在だったが、湾岸戦争時に外務省が自衛隊の海外派遣を見送ったことに抗議し1991年に突如辞職、周囲を驚かせた。徳仁親王妃雅子が外務省時代に尊敬していた上司という。 1988年7月 外務省北米局北米第一課長・1996年11月 - 1998年3月10日 内閣総理大臣補佐官(非常勤・沖縄担当)
  <沖縄担当のとき沖縄住民と島の踊りを踊っていて、大衆性のある好感度高い元外交官と思っていたが、近頃の中国との接近(接近しても構わないが)、言動に注意人物と木庵は判断している。それを櫻井も指摘していることに興味がある。木庵>
つづく